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研究者の詳細

氏名 研究キーワード
下馬場 朋禄
シモババトモヨシ
ホログラフィ、ホログラム、3次元ディスプレイ、計算機合成ホログラム、高速計算アルゴリズム、電子ホログラフィ、デジタルホログラフィ、波動光学
ホームページ http://brains.te.chiba-u.jp/~shimo/
年度 種 別 交付対象時所属機関 研究紹介文 研究成果報告
2013年度 一般研究助成 情報 千葉大学大学院工学研究科 人工システム科学専攻 PDF PDF
研究題名 広視域なホログラフィック3次元ディスプレイに関する研究

訪問記

最終更新日 : 2014/08/07

訪問日:2014/07/28
訪問時の所属機関 千葉大学 大学院工学研究科 人工システム科学専攻 訪問時の役職 准教授

千葉大学・下馬場朋禄先生を訪ねて
 先生の研究は3次元ディスプレイで、過去何回かブームがありましたが家庭向けには普及しなかったとのことです。従来は大体メガネを着用するもので、メガネを着用しないものもありますが、長く見ると気持ちが悪くなり、人間が立体を見るときに満たすべき要件を全て満たしていないからとのことです。最近3次元テレビが話題となり、究極の3次元ディスプレイということでホログラフィが再度注目されており、助成研究はまさにその内容です。
 詳しい説明に入る前に、ホログラフィがどういうものかを実感させてもらいました。2次元の写真乾板上に作製したタクシー、ロシアの文化財、貴婦人(視域50~60度)の3次元ディスプレイの静止画で、今回の研究はこれを動画化するものです。この静止画を顕微鏡でみると、1μm以下の縞模様があり、これをこの大きさ(30×20cm程度)のディスプレイにすると数千億画素となり、現状の液晶ディスプレイ(以下LCDと表示)の数万倍と膨大な画素数が必要になります。従って、ホログラフィは3次元ディスプレイには理想的ですが、画素数が多いため、計算量が多くなり処理に時間が掛かり、リアルタイムで処理する動画は難しいとのことです。画像サイズの現状は200万画素で1cm角程度で、しかも視域は2~3度と小さく、少し横から見ると見えなくなります。
 ホログラフィの原理は、3次元物体のデータをコンピュータ上に作り、その3次元物体から発する光波の伝播計算(回折計算)を行うことで、 3次元物体の光情報を写真乾板データのパターン(ホログラム画像)に記録します。この2次元物体のホログラム画像をLCD上に表示し、そこに再生光を照射することで、ホログラム上に記録した3次元像を空間に再現します(添付図を参照)。
 画像サイズと視域は、LCDパネルの大きさと画素数で決まる為、当然ながらLCDを沢山並べる、画素数を多くする、レンズで縮小する(但し画像サイズが縮小する)などの研究が行われています。このような方法は画像サイズと視域の問題を改善できますが、システムのサイズやコストが高くなる問題があります。
 先生のアイデアは、一般的なLCDに広い拡散角を持つ拡散板を組み合わせた極めて簡易なシステムです。拡散板も市販品(数万円程度)を使います。拡散板を挿入することで 2~3度の視域が30度と大きく広がります。一方、拡散板により若干画質は落ちますが、人の目の認識には影響するかどうかは今後、検討を重ねていきたいとのことです。LCDと拡散板の位置合わせは重要のようです。画像サイズを大きくするには、基本的にはLCDを並べますが、現状は密に並べる必要がありますが、この方法では疎に並べるだけでよいとのことです。また、計算量を削減するために、独自に考案した波面記録法に、ベクトル量子化による近似表現を適用し、更に高速化した独自の高速計算アルゴリズムを考案し、併せて利用します。
 研究の現状は、シミュレーションによりこの位の像が出せるだろうという理論確認を終了し、これから2年位掛けて実証していくとのことです。不可能と言われている研究の割には淡々とご説明いただきました。先生の技術がブレークスルーになることを期待したいと思います。   (2014年7月28日訪問、技術参与・飯塚)